特定非営利活動法人 琵琶故知新
設立趣旨書
琵琶湖は、日本最大の淡水湖にして世界有数の古代湖であり、長い歴史をかけて、独自の生態系と文化を育んできました。ところが、戦後の経済発展に伴う人間活動の影響のもと、富栄養化による水質悪化が急速に進行しました。合成洗剤の使用に反対する県民運動が大きなうねりとなり、1979年には、「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が制定されました。また、下水道も、全国の平均を上回るスピードで急速に普及してきました。それらの対策により、水質悪化の進行については、いったんは収まったかに見えました。しかし、その後、外来性生物の問題をその典型として、生態系に関わる問題が浮上するようになりました。1994年には、大渇水をきっか けとして、水草が南湖を中心に大量に繁茂するようになりました。そして、切れた水草が湖辺に漂着し腐敗臭を発するなど、新種の環境問題が相次いで認知されるようになりました。
滋賀県は、県民の環境意識が総じて高いといわれています。その一方で、この水草に関する問題については、地域住民からの苦情が自治体に寄せられるなど、その対策は行政に頼りがちでもあります。今後、人口が減少に転じると、税収減が見込まれる自治体では、公共サービスが減少に向かうことは避けられません。結果、地域の環境問題への対処においては、市民による自助・共助の取り組みが重要性を増してくることになるでしょう。そのためには、環境保全に積極的な市民が、主体的かつ持続的に環境問題の解決に取り組むことが可能になるような、環境自治の実現に向けて社会を組み替えていく必要があります。
そのような状況の中で、私たちは、のちにメンバーとなる一人が毎朝湖畔に打ち上げられた水草の清掃を続けていることを知りました。そしてそのメンバーと語りあうなかで、清掃活動を行いながら打ち上げられた水草の堆肥化や再利用を進めて、地域内で「小さな循環」を生み出せないかと考えるようになりました。また、滋賀県が刈り取った大量の水草を、民間企業の活力も活用して堆肥化し、多くの市民が市民活動の一環としてその堆肥化された水草を利用する「大きな循環」を生み出せないかと考えるようにもなりました。
2017年には、市民団体「水宝山」(水草は宝の山)を結成しました。この構想を、社会課題解決アイディアコンテスト(チャレンジ!オープンガバナンス2017)に大津市とともに応募したり、市民ワークショップを催したりする中からもヒントを得るなかで、環境活動の主催者と参加者に対する「ありがとう」の気持ちや琵琶湖の環境を守りたいという想いを、「びわぽいんと」という地域ポイントの形で循環させる仕組みを開発しました。今後は、この仕組みを地域に定着させ、琵琶湖の環境活動に関わる人たちの連帯を深めるとともに、環境問題を「他人事」ではなく「自分事」(じぶんごと)ととらえて行動する人を増やし、環境自治の基盤を支えていきたいと考えています。
今回、法人として申請するに至ったのは、任意団体として実践してきた活動を地域に定着させ、継続的に推進していくことと、琵琶湖の環境保全に関わる自治体や大学・研究機関、企業、特定非営利活動法人、その他団体との連携を深めていくために、社会的に認められた公的な組織にする必要があると考えたからです。また、「びわぽいんと」には金銭の授受が発生しますが、この仕組みは営利目的ではなく、「善意の循環」という公益を目的とするものであるため、特定非営利活動法人格を取得することが最適であると考えました。
法人化することによって、組織を発展、確立し、将来的に環境自治の実現に資するさまざまな展開をすることができるようになり、社会に広く貢献できると考えます。
皆様のご理解と幅広いご支援をお願いいたします。
設立に至った経緯
- 平成29年4月 総合地球環境学研究所が三井物産環境基金研究助成「オープンサイエンスと市民協働の融合による琵琶湖流域圏水草資源活用コミュニティーの形成」に採択される
- 平成29年秋 上記研究チームメンバーの一部と市民有志により「水宝山」結成
- 平成30年3月 チャレンジ!オープンガバナンス2017で大津市と水宝山の協働提案「琵琶湖の水草有効利用の社会的仕組みを市⺠の力でつくりあげる」がファイナルに入選
- 平成30年7月 総合地球環境学研究所と「びわ湖の水草ワークショップ」を共催
- 令和元年8月 第9回マザーレイクフォーラムびわコミ会議でディスカッション「水草×情報化」をホスト
- 令和元年10月 設立総会
- 令和元年12月 設立登記
理事長あいさつ
理事長
脇田 健一
こんにちは。理事長の脇田です。琵琶湖の周りには、実に多様な方たちが、琵琶湖のことを想い、その環境保全のために様々な活動に取り組んでおられます。ひとつひとつは小さな環境保全活動かもしれませんが、そのような小さな活動が相互につながり、琵琶湖を包み込むことはできないだろうか、そのようなことを思うようになりました。
そして小さな環境保全活動の実践者、企業人、研究者、専門家…様々な立場の方達が参加する市民グループ「水草は宝の山」(「水宝山」)を結成し、いろいろな議論を行ってきました。この市民グループは琵琶湖の水草問題をきっかけとして生まれましたが、水草問題を中心にしながらも議論は大きく展開していくことになりました。
琵琶湖のまわりで実践されている小さな環境保全活動がうまくつながることで、琵琶湖の周りに環境保全の連帯が生まれるようにしていけないだろうか。そのような活動が、企業のCSR活動ともつながり、琵琶湖を支える社会的仕組みを、多くの人の力で生み出すことはできないだろうか。善意(利他)と誠意(共感)と熱意(持続)で琵琶湖を守る社会的な仕組みができないだろうか。いろいろな議論をしてきました。そして、「水宝山」の仲間である川戸良幸さん(琵琶湖汽船)のアイデアを核に、グループのメンバーで「びわぽいんと」という新しい社会的仕組みを構想し、そしてその「びわぽいんと」という社会的仕組みを運営する非営利活動法人「琵琶故知新」を設立するに至りました。
「琵琶故知新」は、まだ生まれたばかりのヨチヨチ歩きのNPOです。多くの皆さんのご理解、ご協力、ご支援を賜りながら、少しずつ活動を展開していければと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします。
法人概要
名称 | 特定非営利活動法人 琵琶故知新 |
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事務局 | 大津市打出浜2-1 BizBaseコラボ21 B1 |
設立 | 令和元年10月 |
役員一覧
理事長 | 𦚰田 健一(龍谷大学社会学部教授) |
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副理事長 | 川戸 良幸(公益社団法人びわこビジターズビューロー会長) 近藤 康久(総合地球環境学研究所教授) |
理事 | 深尾 昌峰(龍谷大学副学長) 秋國 寛(株式会社DIIIG代表取締役) 髙橋えみ(Rich Forward株式会社代表取締役) |
理事(事務局長) | 藤澤 栄一(近江ディアイ株式会社代表取締役) |
監事 | 佐藤 拓也(YuMake合同会社代表社員) |
公告
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