琵琶湖の水位上昇で浸水の可能性も!?今すぐできる3つのこと
出典:滋賀県水害情報発信サイト(画像は平成25年9月に台風18号の被害を受けた高島市南鴨の様子)
ここ数年で、台風やゲリラ豪雨による河川の氾濫や土砂崩れが多大な被害を及ぼす光景をたくさん目にしました。
「滋賀県は琵琶湖があるから大丈夫。琵琶湖が水を貯めてくれるので浸水しない」本当にそうでしょうか。実は琵琶湖も河川と同じく、洪水のリスクマップが存在していました。
河川だけじゃない!琵琶湖の洪水リスク情報
今回お話を伺ったのは滋賀県庁内にある滋賀県土木交通部 流域政策局 流域治水政策室の中川(なかがわ)さんと赤田(あかだ)さん。
国や県が(洪水予報河川などの)大きい河川で出す「浸水想定区域図」、小さい河川も含めた「地先の安全度マップ」、土石流などのおそれのある場所を示す「土砂災害警戒区域」等、これらの『リスク情報』をもとに市町が作成するのが『ハザードマップ』。今回注目したのは、県が出すリスク情報の中に琵琶湖の洪水リスク情報も存在しているということです。
琵琶湖には一級河川だけでも117本の河川が流入するにも関わらず、流出河川は瀬田川のみ。大雨が降ると琵琶湖の水位が上昇し、実は湖辺地域では昔から洪水に悩まされてきたのです。
そもそも琵琶湖の水位0とは
琵琶湖の水位0(基準水位)は東京湾中等潮位+84.371m。平成4年以前は、一般に「琵琶湖水位」という場合、瀬田川の唐橋にある鳥居川水位観測所の水位で代表されてきました。しかし、瀬田川洗堰の放流の影響を受けることなどから、平成4年以降は、琵琶湖にある5箇所の水位観測所(片山・彦根・大溝・堅田・美保ヶ崎)の平均水位を使用しています。
琵琶湖の水位情報を見て、例えばマイナスの場合「最近、雨が降っていないから」と思いがちですが、6月16日~10月15日の洪水期はマイナス水位で調整しているとのこと。琵琶湖の水位管理は国土交通省が瀬田川洗堰の放流量を調節することで実施されているのです。
琵琶湖からの浸水リスク情報を見てみよう
出典:滋賀県防災情報マップ(防災情報マップの背景地図には地理院地図、Google Maps、Open Street Mapsなどのインターネット地図を使っています)
平成13年の水防法の改正により、自治体はリスク情報をこれまでより積極的に公開することになりました。
琵琶湖の洪水による浸水リスク情報は、各市役所の閲覧資料や滋賀県のホームページから確認することができます。左のバナーから「琵琶湖 洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」にチェックを入れてお住まいの地域をご覧ください。
単に湖岸地域のリスクが高いとは言えないことが分かると思います。湖岸から少し離れた、主に干拓地域などでも赤く染まっているのが分かります。想定最大規模とは、1000年に1度の発生確率を下回らないように算出されていますが、1000年に1度がいつ来るかは分かりません。
このページからは他にも「洪水浸水想定区域図」をチェックすることで、各河川からの影響も確認することができます。
豪雨による浸水リスクや複数の河川の浸水リスクを合わせて確認したい場合はどうすればよいでしょうか。「それらを総合的にまとめたのが『地先の安全度マップ』になります」
地先安全度マップでは、大雨が降った場合に想定される浸水の深さなどが確認できます。もし自宅が赤やピンクに染まっている場合、2階への浸水の可能性も高いので、事前の避難場所を別に考えておくことが重要です。非常に細かな色分けがされており、道を挟んで向かいの家でも色分けが変わることがあります。
「どうなった時に、どこにどう避難するかは世帯ごとに変わってくるということです。自治体がそれぞれの世帯に合わせたベストな避難方法を指示することは事実上不可能です」それぞれの家庭での対策が非常に重要だということです。
琵琶湖の洪水はじわじわと来る
出典:滋賀県水害情報発信サイト(画像は平成25年9月に台風18号の被害を受けた東近江市今堀町の様子)
琵琶湖の洪水は河川とは全く違った性質があります。河川は氾濫すると浸水までわずかな時間となりますが、琵琶湖の洪水はタイムラグがあるので注意が必要です。
想定最大規模の洪水の場合、琵琶湖の水位は最大で基準水位+2.6m。これがなんと降り始めから7日後に浸水被害が最大に達すると想定されるれているのです。
琵琶湖の浸水リスクのある地域にお住まいの方は、雨や河川の水流が落ち着いてから数日間が経過しても琵琶湖からの洪水リスクがあるということを頭に入れておくのがよさそうです。
実際に浸水リスクが高まってきたら
出典:滋賀県土木防災情報 河川防災カメラ(写真はある日の河川防災カメラからのライブ映像)
天気予報で台風や大きな雨の情報があれば、その後も注意して情報収集をした上で、世帯ごとに対策を検討してください。近くの河川の様子が気になる際は、河川防災カメラで現在の状況を見ることができます。
「現地に近づくことは絶対にやめてください。琵琶湖の河川防災カメラは公開されていません。琵琶湖は水位が上がっても水面が穏やかなので危機感を感じないと思います」
ハザードマップの信頼性とその進化
出典:滋賀県水害情報発信サイト(画像は平成25年9月に台風18号の被害を受けた近江八幡市六枚橋の様子)
ハザードマップの情報と実際の被害を検証された際に以下の2つが浮かび上がりました。
・ハザードマップの浸水地域と実際の浸水地域がほぼ合っていた
・浸水リスクが出ていない地域も浸水した
各河川のリスク情報をもとに作成する為、リスク情報が出ない小さい河川、また河川から離れた地域など、マップ上では浸水地域となっていなかった地域も浸水した事例がありました。
滋賀県において、リスク情報の空白地帯を解消し、みなさんのご自宅やお勤め先にある浸水リスクを示すために作成されたのが「地先の安全度マップ」であり、災害リスクを予測するシステムは日々進化しています。
今すぐできる3つのこと
出典:滋賀県防災情報マップ(防災情報マップの背景地図には地理院地図、Google Maps、Open Street Mapsなどのインターネット地図を使っています)
1、自治体のハザードマップを確認する
まずは各自治体のハザードマップを確認してください。中には琵琶湖のリスク情報が反映されていないことがあり、他からも情報を得る事が必要です。
滋賀県ホームページ 各自治体のハザードマップリンク集
2、琵琶湖の浸水リスク情報・地先の安全度マップを確認する
自治体のハザードマップと併せて確認することで、より広い可能性のリスクを知ることができます。
滋賀県ホームページ 滋賀県防災情報マップ
3、上記を確認した上で、各家庭で避難場所や対策を確認する。
各家庭の避難場所や避難所はどこなのか。2階への避難でも安全な場合があるのかないのか。また地震なのか浸水なのかで、適切な避難先が変わることもあります。リスク情報別の安全度マップを確認しながら対策してください。
プッシュ型の情報収集ツールが便利
とはいえ、忙しい日常の中で定期的にこういった情報を取りに行く(プル型)のは難しいかもしれません。リスク情報や避難情報は発信している管轄がそれぞれ違うというハードルもあります。そこで多くの皆さんに登録いただきたいのが、メールやLINEでリスク情報が配信されるプッシュ型情報です。
管轄が違うリスク情報や避難情報をまとめて配信している「しらしがメール」や「しがしがLINE公式アカウント」にぜひご登録ください。「お住まいの地域や必要な情報を選んでいただくことで、ご自身に必要な情報だけが届くようになります」
しらしがメールの登録はこちらへ空メールを送信してください
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「何度も言いますが、水害は予想ができます。起きる前に行動しておくことが大事なんです」今すぐできる3つのこと+しらしがメール or LINEの登録をぜひ実践しましょう。
※記事内の水害写真は琵琶湖の洪水が原因に限ったものではありません。滋賀県内の水害履歴や水害写真は滋賀県水害情報発信サイトでご覧いただけます。
1980年 高島市生まれ。守山市在住。
大学卒業後は大阪・東京に在住するも故郷の魅力を再認識し滋賀にUターン。
普段は子育て情報誌の編集やまちづくりに関するイベント運営などを行っています。
趣味は空手とチアダンス。三姉妹の母。
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